パソコンの動作が重いと感じたときや、新しく購入したSSDの性能を確かめたいときに役立つのが、ストレージの速度測定です。数ある測定ソフトの中でも、世界中で標準的に使われているのが「クリスタルディスクマーク(CrystalDiskMark)」です。
しかし、いざソフトを起動して測定してみても、並んでいる数字や英語の意味がわからず、自分のSSDが速いのか遅いのか判断に迷う方も少なくありません。専門的な用語が並んでいるため、初心者の方には少しハードルが高く感じられることもあります。
この記事では、SSD速度測定の定番であるクリスタルディスクマークの見方を、初心者の方にもわかりやすく解説します。項目の意味から、速度の目安、結果が遅いときの対処法まで網羅していますので、ぜひ参考にしてください。
SSD速度測定でクリスタルディスクマークを使うメリットと基本の準備

ストレージの性能を数値化して確認することは、パソコンを快適に使い続けるために非常に重要です。まずは、なぜこのソフトが推奨されるのか、その理由と準備の手順から確認していきましょう。
クリスタルディスクマークが世界中で支持される理由
クリスタルディスクマークは、日本で開発されたフリーソフトウェアでありながら、世界中のメディアやユーザーがストレージの性能比較に使用しているデファクトスタンダードです。その最大の理由は、操作がシンプルでありながら、SSDの性能を多角的に測定できる点にあります。
ストレージには「大きなファイルを移動するのが得意」なものや「小さなファイルを大量に処理するのが得意」なものなど、製品によって特性が異なります。このソフトを使えば、それらの性能を個別に数値化できるため、自分の用途に合った性能が出ているかをひと目で判断できます。
また、完全に無料で利用でき、広告表示なども控えめであるため、誰でも安心して導入できる点も大きなメリットです。パソコンのアップグレードを検討している際や、中古のパソコンを購入した際の健康診断としても非常に優秀なツールと言えます。
ソフトのダウンロードとインストール手順
まずは、公式サイト(Crystal Dew World)からソフトをダウンロードしましょう。公式サイトには「通常版」のほかに、キャラクターが描かれた「Shizuku Edition」などがありますが、測定機能自体に違いはありません。こだわりがなければ、シンプルな通常版を選んでください。
ダウンロードしたインストーラーを実行すると、利用規約の同意画面が表示されます。内容を確認して進めると、デスクトップにショートカットアイコンが作成されます。インストールが不要な「ポータブル版(ZIP版)」も用意されているため、自分の環境に合わせて選択しましょう。
初めて起動する際は、管理者権限を求められることがあります。ストレージの深部まで正確にテストを行うために必要な許可ですので、そのまま「はい」を選択して進めてください。画面が表示されたら、いよいよ速度測定の準備が完了です。
測定を開始する前の注意点と推奨設定
正確な測定結果を得るためには、PCの状態を整えることが不可欠です。測定中は、他のアプリケーションをすべて閉じておくようにしてください。特に、ウイルス対策ソフトのスキャンやWindows Updateがバックグラウンドで動いていると、数値が大幅に低下する可能性があります。
ノートパソコンを使用している場合は、必ずACアダプターを接続して電源供給を行いましょう。バッテリー駆動時は、省電力モードによってCPUやストレージのパフォーマンスが制限されてしまうため、本来のSSD速度が測定できなくなる恐れがあるからです。
また、外付けSSDを測定する場合は、接続するUSBポートの規格も確認が必要です。PC側のポートが古い規格(USB 2.0など)だと、SSD自体の性能がどんなに高くても、ポートの制限によって低い数値しか出ません。可能な限り、最新の青い色の端子やType-C端子に接続しましょう。
クリスタルディスクマークの画面の見方と各項目の意味

ソフトを起動すると、いくつかの数値や英語が並んだ表が表示されます。一見難しそうに見えますが、注目すべきポイントを絞れば、初心者の方でも簡単に状況を把握することができます。
「READ」と「WRITE」が表す意味
画面の右側に並んでいる「READ」と「WRITE」は、それぞれ「読み込み速度」と「書き込み速度」を表しています。ストレージの基本性能を示す最も重要な指標です。読み込み速度は、保存されているデータを開く速さに影響し、書き込み速度はデータを新しく保存する速さに影響します。
パソコンの操作感に大きく関わるのは、主に「READ(読み込み)」の方です。OSの起動やソフトの立ち上げ、ゲームのロード時間などは、この読み込み速度が速ければ速いほど短縮されます。一方で、動画編集などの大きなファイルを保存する作業が多い場合は、書き込み速度も重要になります。
一般的に、SSDは書き込みよりも読み込みの方が速い傾向があります。この2つのバランスを見ることで、そのSSDがどのような作業に向いているのかを判断できます。まずは自分のSSDが、カタログに記載されている数値に近い「READ」を出せているかを確認してみましょう。
「SEQ」と「RND」の違いと重要性
左側の項目にある「SEQ(シーケンシャル)」と「RND(ランダム)」は、データの扱われ方を指しています。「SEQ」は、映画の動画ファイルのような大きなひとまとまりのデータを連続して処理する速度を示しており、一般的にカタログスペックとして記載されるのはこの数値です。
一方で、「RND」は、OSの起動や各種設定ファイルなど、バラバラに配置された小さなファイルを読み書きする速度を示します。実は、普段のパソコン操作における「キビキビ感」に直結するのは、シーケンシャルよりもこのランダムアクセスの方だと言われています。
シーケンシャルの数値が非常に高くても、ランダムの数値が極端に低い場合は、実際の操作で快適さを感じにくいことがあります。クリスタルディスクマークでは、この両方の側面から性能を評価できるため、総合的な実力を把握するのに最適なのです。
単位「MB/s」と「IOPS」の読み取り方
測定結果に表示される「MB/s」という単位は、「1秒間に何メガバイトのデータを転送できるか」を表しています。現在のSSDであれば、数百から数千という数値が出るはずです。この数値が大きいほど、大容量データの転送が短時間で終わることを意味します。
また、設定を切り替えることで表示できる「IOPS(アイオプス)」という単位もあります。これは「1秒間に何回の読み書き指示を処理できるか」という回数を示す単位です。主にサーバー用途や、非常に細かいデータのやり取りを重視する場合に参考にされますが、個人利用では「MB/s」を基準にするのが一般的です。
デフォルトの状態では「MB/s」で表示されているため、基本的にはそのままで問題ありません。単位の意味を理解しておくことで、他の製品のスペック表を見たときにも、客観的な比較ができるようになります。まずは「MB/s」の数値がどれくらい出ているかに注目してください。
【豆知識】Q(Queue)とT(Thread)とは?
項目の横に「Q8T1」などの表記がありますが、これはテストの条件を示しています。「Q(キュー)」は一度に送る命令の数、「T(スレッド)」は同時に処理する道の数を指します。基本的にはデフォルト設定のまま測定し、一番上の行(最も負荷をかけた状態)と、一番下の行(ランダムアクセス)の数値をチェックするのが定石です。
SSDの接続規格ごとの速度目安とスコアの比較方法

測定結果の数値が良いのか悪いのかを判断するには、そのSSDが採用している接続規格(インターフェース)を知る必要があります。規格によって出せる速度の限界値が決まっているためです。
SATA接続SSDの一般的なスコア目安
2.5インチの形状をしたSSDや、少し古いノートパソコンに搭載されているのが「SATA(サタ)」規格のSSDです。この規格は、構造上の限界から最大速度が約600MB/s程度に制限されています。そのため、クリスタルディスクマークでの測定結果も、この近辺に収まるのが正常です。
具体的な目安としては、シーケンシャル読み込みで500〜560MB/s程度出ていれば、その製品の性能をフルに発揮できていると言えます。もし200〜300MB/s程度しか出ていない場合は、接続ポートが古い規格(SATA 2.0など)になっているか、SSDの劣化が始まっている可能性があります。
HDD(ハードディスク)の速度が100〜150MB/s程度であることを考えると、SATA SSDでも十分に高速ですが、最新の規格に比べると控えめな数値となります。現在のPC環境において、最低限確保しておきたい速度の基準として捉えておきましょう。
NVMe(PCIe)接続SSDの世代別速度差
最近主流の「M.2(エムドットツー)」と呼ばれる細長い形状のSSDは、NVMe(PCIe)規格を採用しています。これには世代(Gen)があり、世代が進むごとに速度が飛躍的に向上しています。測定結果がどの世代に該当するか、以下の表を参考に照らし合わせてみてください。
| 規格(世代) | 読み込み速度(SEQ)の目安 | 主な特徴 |
|---|---|---|
| NVMe PCIe Gen3 | 約2,000 〜 3,500 MB/s | 少し前の主流。現在でも十分に高速。 |
| NVMe PCIe Gen4 | 約5,000 〜 7,500 MB/s | 現行のミドル〜ハイスペックPCの定番。 |
| NVMe PCIe Gen5 | 約10,000 〜 14,000 MB/s | 最新の超高速モデル。発熱も大きい。 |
このように、NVMe SSDはSATAとは比較にならないほど高速です。Gen4対応のSSDを搭載しているのにGen3並みの速度しか出ていない場合は、マザーボード側のスロットがGen4に対応していないなどの原因が考えられます。自分のPCのスペックと見比べてみましょう。
外付けSSDの場合の速度低下とUSBの影響
外付けSSDをクリスタルディスクマークで測定する場合、内蔵SSDよりも低い数値が出ることが一般的です。これは、USBケーブルやPC側のUSBポートの規格がボトルネック(速度の壁)になってしまうためです。例えば、USB 3.2 Gen2であれば、理論上の最大速度は約1,250MB/s程度となります。
もし高速な外付けSSDを使っているのに400MB/s程度しか出ていないなら、それはUSB 3.0(USB 3.2 Gen1)のポートに接続されている可能性が高いです。また、ケーブル自体が古い規格のものである場合も、本来の速度は出せません。外付けの場合は「接続環境」が非常に重要です。
外付けSSDの測定結果を見る際は、まずその製品がどのUSB規格に対応しているかを確認してください。その上で、PC側のポートも同じ規格に対応しているかを確認します。製品の公称値の8割から9割程度の数値が出ていれば、適切に動作していると判断して良いでしょう。
測定値は、SSDの「空き容量」によっても変動します。SSDは空き容量が少なくなると、データの整理効率が落ち、書き込み速度を中心に大幅に低下する特性があります。正確な実力を測りたい場合は、なるべくデータが少ない状態でテストすることをおすすめします。
測定結果が遅い場合に考えられる原因と改善策

クリスタルディスクマークで測定した結果が、期待していた数値よりも大幅に低い場合があります。故障を疑う前に、いくつかの設定や環境を確認することで、速度が回復する可能性があります。
サーマルスロットリング(熱による制限)の有無
高速なNVMe SSDは、動作中に非常に高い熱を発します。温度が一定以上に達すると、SSDは自身の故障を防ぐために強制的に動作速度を落とします。これを「サーマルスロットリング」と呼びます。測定中に温度が上昇し、後半になるほど速度が落ちる場合は、この現象が疑われます。
特にGen4以降のSSDは発熱が激しいため、ヒートシンク(放熱板)の装着がほぼ必須です。もしヒートシンクなしで使用しているなら、後付けのパーツを装着するだけで速度が安定し、本来のパフォーマンスを発揮できるようになることが多いです。
フリーソフトの「CrystalDiskInfo」を併用すると、測定中のSSD温度をリアルタイムで確認できます。温度が70度を超えているようなら、冷却対策を優先的に考えましょう。ケース内のエアフロー(空気の流れ)を改善することも、間接的な速度向上につながります。
ドライバーやOSの設定の見直し
SSD本来の性能を引き出すためには、適切なドライバーがインストールされている必要があります。Windowsの標準ドライバーでも動作はしますが、メーカーが提供している専用ドライバーを導入することで、パフォーマンスが改善したり、管理ツールが使えるようになったりする場合があります。
また、Windowsの「電源プラン」も確認してみましょう。「省電力」設定になっていると、ストレージの応答速度が低下することがあります。デスクトップPCや電源接続中のノートPCであれば、「高パフォーマンス」または「バランス」に設定しておくのが望ましいです。
さらに、書き込みキャッシュの設定が有効になっているかも重要です。デバイスマネージャーからSSDのプロパティを開き、「ポリシー」タブにある「デバイスでの書き込みキャッシュを有効にする」にチェックが入っているか確認してください。これがオフになっていると、書き込み速度が極端に遅くなる原因となります。
物理的な接続ミスやケーブルの劣化
単純なことですが、接続されているポートの間違いは非常に多い原因の一つです。マザーボードには複数のM.2スロットがありますが、すべてのスロットが同じ速度に対応しているとは限りません。CPUに近いスロットは高速だが、下のほうのスロットはチップセット経由で遅い、という仕様はよくあります。
SATA接続の場合は、ケーブルの品質も影響します。古いケーブルを使い回していると、内部で断線しかけていたり、規格が古かったりして転送エラーが発生し、結果として速度が低下することがあります。また、コネクタ部分にホコリが溜まっているだけでも接触不良による速度低下を招きます。
一度ケーブルを抜き差ししてみる、あるいは別のポートに差し替えてみるだけで、数値が劇的に改善することも珍しくありません。特に自作PCやパーツを増設した場合は、マザーボードのマニュアルを読み返し、最適なスロットに正しく装着されているかを再確認してみましょう。
より正確に測定するための設定とおすすめの実行方法

クリスタルディスクマークには、測定条件を変更できる設定項目がいくつかあります。基本的にはデフォルトで構いませんが、目的によっては設定を変更することで、より詳細なSSDの状態が見えてきます。
測定回数とファイルサイズの適切な選び方
画面左上にある「5」という数字は測定回数、「1GiB」という数字はテストに使用するファイルサイズを示しています。測定回数を増やすほど数値の平均化が行われ、突発的な誤差が少なくなりますが、その分SSDへの書き込み負荷が増え、寿命をわずかに削ることになります。
通常は「5回」で十分ですが、短時間で済ませたいなら「3回」でも大きな違いはありません。ファイルサイズについては、一般的な利用なら「1GiB」で問題ありませんが、大容量の動画編集などを行う方は、より大きな「4GiB」や「8GiB」に設定してみるのも一つの手です。
ファイルサイズを大きくすると、SSDに搭載されている「キャッシュ(一時保存領域)」を使い切った後の、本来の書き込み速度を測定できます。安価なSSDの中には、キャッシュ内は速いが、キャッシュが切れると極端に遅くなる製品もあるため、その特性を見極めるのに有効です。
「デフォルト」と「NVMe」設定の使い分け
最近のバージョンでは、設定メニューから「設定」を選び、テストのパターンを選択できるようになっています。通常のSATA SSDや外付けSSDを測定する場合は「デフォルト」のままで問題ありませんが、内蔵のNVMe SSDを測定する際は「NVMe SSD」モードへの切り替えが推奨されます。
このモードに切り替えると、測定に使用されるデータの条件(キュー数やスレッド数)が、NVMe SSDの並列処理能力を最大限に引き出せる設定に最適化されます。これにより、カタログスペックに近い最高速度をより引き出しやすくなります。
逆に、この設定を行わないと、超高速なGen4/Gen5 SSDであっても、本来の実力が数値として現れないことがあります。測定対象のSSDがM.2 NVMeタイプであれば、まずは設定を切り替えてからテストを開始するのが、正しい見方への近道です。
実行中に避けるべき操作と環境構築
測定ボタンを押して「テスト中」になったら、キーボードやマウスの操作を控えて静止状態で待ちましょう。ブラウザでWebサイトを閲覧したり、動画を再生したりすると、その動作自体のデータ読み書きが割り込んでしまい、正確なスコアが測定できなくなります。
また、Windowsのバックグラウンド更新にも注意が必要です。「設定」からWindows Updateが進行中でないかを確認してから開始してください。もし測定中にPCがカクつくようなら、他の常駐ソフトが影響している可能性が高いため、タスクマネージャーで負荷の高いソフトを終了させましょう。
室温が高すぎる環境での測定も避けたほうが賢明です。特に夏場などは、測定を開始する前からSSDが熱を持っていることがあり、テスト負荷ですぐに制限がかかってしまいます。冷房の効いた部屋で、PCを起動してから数分置いて、温度が安定したタイミングで実行するのがベストです。
クリスタルディスクマークの見方を活用してSSDを快適に使うためのまとめ
クリスタルディスクマークは、単に速度を競うためのツールではなく、自分のパソコンが本来の性能を発揮できているかを診断するための強力な味方です。今回解説した見方のポイントを意識するだけで、表示される数値が持つ意味がはっきりと理解できるようになったはずです。
まずは「SEQ(シーケンシャル)」の数値で接続規格に応じた最高速度が出ているかを確認し、次に「RND(ランダム)」の数値で普段使いの快適さをチェックしましょう。もし数値が低い場合は、接続ポートや発熱、OSの設定を見直すことで、多くのケースで改善が期待できます。
SSDは消耗品ではありますが、その性能を正しく把握しておくことは、データのトラブルを未然に防ぎ、買い替え時期を適切に判断することにもつながります。定期的に速度測定を行い、愛用しているパソコンのコンディションを良好に保ちましょう。
【まとめ:チェックリスト】
・READは「読み込み」、WRITEは「書き込み」の速さ
・SEQは「大きなファイル」、RNDは「細かな操作」の快適さ
・SATAなら500MB/s前後、NVMeなら世代に応じた数千MB/sが目安
・速度が出ないときは「熱」と「接続ポート」をまず疑う
・測定時は他のソフトを閉じ、ノートPCは電源に接続する


