自宅やオフィスにNAS(ネットワーク接続ストレージ)を導入しようと考えたとき、真っ先に候補に上がるのがSynology(シノロジー)の製品です。特に人気の高い2ベイモデルの中でも、エントリーモデルの「DS223j」と上位モデルの「DS224+」で迷う方は少なくありません。
一見すると似たような外観の2機種ですが、中身のスペックやできることには大きな違いがあります。価格差も2万円以上あるため、自分にとって本当に必要な機能はどちらなのかを正しく見極めることが大切です。
この記事では、Synology DS223jとDS224+の違いを徹底的に比較し、どのような用途にどちらが向いているのかを分かりやすくお伝えします。初めてNASを買う方でも、失敗しないための判断基準を身につけることができますので、ぜひ最後までご覧ください。
Synology DS223jとDS224+の違いをスペック表で一挙比較

まずは、DS223jとDS224+の基本的なスペックの違いを整理しましょう。両者は「2台のハードディスクを搭載できる」という点では共通していますが、脳にあたるCPUや作業領域であるメモリの性能に決定的な差があります。
| 項目 | DS223j | DS224+ |
|---|---|---|
| CPU | Realtek RTD1619B (4コア) | Intel Celeron J4125 (4コア) |
| メモリ | 1GB (拡張不可) | 2GB (最大6GBまで拡張可) |
| LANポート | 1GbE × 1 | 1GbE × 2 (リンクアグリゲーション対応) |
| ファイルシステム | Btrfs / ext4 | Btrfs / ext4 |
| 参考価格 | 約2.9万円 | 約5.1万円 |
CPUの性能差が日々の操作感に与える影響
DS223jに搭載されているRealtek製のCPUは、主にデータの保存や読み出しに特化した省電力なタイプです。一方で、DS224+に搭載されているIntel Celeronはパソコンに近い処理能力を持っており、複数の作業を同時にこなすのが得意です。
具体的には、専用アプリの「Synology Photos」で大量の写真をアップロードした際のサムネイル生成速度や、管理画面のメニューを開く際のレスポンスに差が出ます。DS223jでも十分実用的ですが、キビキビとした動作を求めるならDS224+に軍配が上がります。
また、Intel製CPUを搭載しているDS224+は、特定の動画形式を再生デバイスに合わせて変換する「トランスコーディング」機能にも対応しています。外出先からスマホで動画を楽しみたい場合、この処理能力の差がスムーズな再生を左右することになります。
メモリ容量と将来的な拡張性の違い
DS223jのメモリは1GBで固定されており、後から増やすことはできません。これは、個人でファイルのバックアップを取るだけであれば十分な容量ですが、多くのアプリを同時に動かすと動作が重くなる原因になります。
対してDS224+は、標準で2GBのメモリを搭載しているだけでなく、専用の空きスロットを使って最大6GB(非公式ながらそれ以上の報告もあり)まで増設が可能です。メモリを増設することで、NASの動作がより安定し、重い処理も難なくこなせるようになります。
NASは一度購入すると5年から10年と長く使うデバイスです。将来的に「もっと色々な機能を使ってみたくなった」という時のために、拡張性のあるDS224+を選んでおくのは非常に賢い選択と言えるでしょう。
ネットワーク接続性と背面ポートの構成
背面の接続端子にも明確な違いがあります。DS223jはLANポートが1つだけですが、DS224+には2つのLANポートが備わっています。これは「リンクアグリゲーション」という、2本のケーブルを束ねて通信速度を上げたり、片方が断線しても通信を維持したりする機能のためです。
また、USBポートの配置も異なります。DS223jは背面に2つ配置されていますが、DS224+は前面と背面に1つずつ配置されています。前面にポートがあると、外付けHDDやUSBメモリからのデータ取り込みが非常にスムーズに行えます。
些細な違いに思えるかもしれませんが、頻繁に外部メディアとデータをやり取りする方にとっては、前面USBポートの有無は日々の利便性に大きく関わってきます。設置場所や運用の仕方をイメージして選ぶのがポイントです。
コストパフォーマンス重視ならDS223j!おすすめしたい活用シーン

DS223jの最大の魅力は、なんといっても導入コストの低さです。上位モデルの約半額近い価格で手に入るため、浮いた予算を大容量のハードディスク購入に回すことができます。シンプルに「データを安全に保存したい」という目的には最適の1台です。
DS223jが向いている主なケース
・スマホの写真や動画を自動でバックアップしたい
・PCの大切なデータを二重化(RAID 1)して守りたい
・1人〜家族数人でのファイル共有がメイン
・とにかく安く信頼性の高いNASを始めたい
スマホやPCのバックアップ専用機としての優秀さ
DS223jは、家庭内でのバックアップ用途において非常に高いコストパフォーマンスを発揮します。専用アプリ「Synology Photos」を使えば、スマホのカメラロールをWi-Fi接続時に自動でNASへ保存してくれるため、クラウドストレージの月額料金を節約できます。
PCのバックアップについても、Windowsの「バックアップ」機能やMacの「Time Machine」に対応しており、一度設定してしまえば意識することなくデータを守り続けることが可能です。高度な設定は不要で、まずは守りを固めたいという方にぴったりです。
CPU性能が控えめとはいえ、ファイルの転送速度自体はネットワークの限界(1Gbps)に近い速度が出るため、大容量ファイルのコピーでストレスを感じることはほとんどありません。基本的な「貯める」機能に特化した、質実剛健なモデルと言えます。
低コストで自分だけのプライベートクラウドを構築
「Synology Drive」というアプリを使えば、GoogleドライブやDropboxのような環境を自前で構築できます。DS223jはこの機能を動かすのにも十分な性能を持っており、外出先からドキュメントを閲覧したり、友人にファイルを共有したりすることが可能です。
月額数千円を支払ってクラウドストレージを借り続けるのと比較すると、DS223jを数年運用するだけでコスト的なメリットは非常に大きくなります。初期投資を抑えつつ、便利なクラウド環境を手に入れたい初心者の方には最適な選択肢です。
設定も「QuickConnect」という機能を使えば、難しいルーターの設定なしに外出先からのアクセスが可能になります。この「簡単さと安さ」の両立こそが、Jシリーズ(DS223jなど)が長年愛されている理由と言えるでしょう。
省電力性と静音性がもたらす家庭でのメリット
DS223jは消費電力が非常に低く設計されています。24時間365日動かし続けるNASにとって、電気代は無視できない要素ですが、DS223jなら月々の電気代を数百円程度に抑えることができます。これは家計に優しいポイントです。
また、動作音が静かなのも大きな特徴です。ファンの回転数も細かく制御されており、寝室やリビングの隅に置いてあっても、HDDの動作音以外はほとんど気になりません。静かな環境を維持したい家庭での利用に適しています。
派手な機能はありませんが、生活の邪魔をせず、静かにデータを守り続ける存在として、DS223jは非常にバランスの取れた製品です。スペックを追求するよりも「手軽に始めたい」という気持ちを最優先するなら、このモデルで間違いありません。
圧倒的な処理能力!DS224+を選ぶべき決定的なメリット

DS224+は、Synologyの製品ラインナップの中でも「Plusシリーズ」と呼ばれる高性能なカテゴリーに属します。単なるストレージの枠を超えて、複数の高度な処理を同時にこなす「サーバー」としての実力を備えているのが最大の特徴です。
DS224+はビジネスユースにも耐えうる設計になっており、家庭で使う場合でも「将来的なやりたいことの変化」に柔軟に対応できる余裕があります。多少予算を足してでも選ぶ価値のある、まさにワンランク上のNASです。
Btrfsファイルシステムによる高度なデータ保護
DS224+が優れている点は、最新の「Btrfs(バターエフエス)」というファイルシステムをフル活用できる点です。Btrfsには、データの破損を自動的に検知して修復する「自己修復機能」や、特定の時点のデータ状態を瞬時に保存する「スナップショット機能」があります。
スナップショット機能を使えば、万が一ランサムウェア(データを暗号化して身代金を要求するウイルス)に感染したり、誤って重要なファイルを上書きしてしまったりしても、過去の正常な状態に一瞬で戻すことが可能です。
DS223jも最近のOSアップデートでBtrfsに対応しましたが、スナップショットなどの重い処理をスムーズに行うには、DS224+の強力なCPU性能が不可欠です。データの「保存」だけでなく「究極の守り」を求めるなら、DS224+の右に出るものはありません。
Dockerや仮想マシンの構築など広がる活用法
ITに詳しい方や、これから技術を学びたい方にとって、DS224+は最高の遊び場になります。「Container Manager(旧Docker)」というアプリを使うことで、広告ブロックサーバーやブログ作成ツール、ホームオートメーションなど、世界中の便利なソフトをNAS上で動かせます。
さらに「Virtual Machine Manager」を使えば、NASの中に仮想的なWindowsやLinuxのパソコンを構築することも可能です。これらはIntel製CPUを搭載し、メモリ拡張が可能なDS224+だからこそ快適に動かせる機能と言えます。
「NASをただのHDDとして使うのはもったいない」と感じるなら、こうした拡張機能は非常に魅力的です。自分好みの便利なサーバーに育て上げていく楽しみは、エントリーモデルでは決して味わえないDS224+ならではの醍醐味です。
ビジネス向けバックアップ「Active Backup for Business」
DS224+以上のモデルでしか使えない強力なアプリに「Active Backup for Business」があります。これは、PC全体のシステムバックアップ、物理サーバー、仮想マシン、さらにはMicrosoft 365などのクラウドデータまで、一括で管理・バックアップできるライセンス無料のツールです。
特にパソコンが故障した際、OSや設定、アプリまで丸ごと元の状態に復元できる機能は非常に強力です。小規模オフィスのデータ保護はもちろん、絶対にデータを失いたくない個人のクリエイターにとっても、これだけでDS224+を選ぶ理由になります。
複数のPCを一括管理し、重複するデータを排除してストレージ容量を節約する機能も備わっています。バックアップ作業の効率化と確実性を追求するなら、このアプリの存在はDS224+を選ぶ決定打となるはずです。
長く使うために知っておきたい拡張性と耐久性の違い

NASは一度セットアップすると、何年も電源を入れたまま運用するものです。そのため「今」のニーズだけでなく、3年後、5年後を見据えた選択が重要になります。DS223jとDS224+では、長期的な運用における安心感に差があります。
メモリ増設が将来の快適さを左右する理由
スマホと同様、NASのOSやアプリも年々進化し、要求されるメモリ量が増える傾向にあります。1GBのメモリしか持たないDS223jは、数年後の最新機能を動かした際に「動作がもっさりする」と感じるリスクがゼロではありません。
DS224+であれば、標準の2GBでも多くの作業をこなせますが、動作に重さを感じたら4GBのメモリを追加して合計6GBに増強できます。この「逃げ道」があることは、長期運用のストレスを大きく軽減してくれます。
メモリに余裕があれば、複数のユーザーが同時にアクセスしても処理待ちが発生しにくくなり、データの転送速度も安定します。家族全員で使う、あるいは仕事のチームで使うといった場面では、この余裕が大きな差となって現れます。
ソフトウェアサポート期間とOSの安定性
Synologyの製品は、OSである「DiskStation Manager (DSM)」のアップデートが非常に長期間提供されることで有名です。しかし、一般的には上位モデル(Plusシリーズ)の方が、より高度な機能や最新のセキュリティ修正を長く受けられる傾向があります。
DS224+はビジネス利用も想定されているため、システムの安定性を高める「Synology High Availability」などの冗長化機能にも対応しています。2台のNASを同期させて、1台が故障しても即座にもう1台が引き継ぐという、高度な運用が可能です。
もちろんDS223jも十分なサポートを受けられますが、ハードウェアの限界に近い部分でOSを動かすことになるため、新機能の恩恵をフルに受けられるのは、やはり余裕のあるDS224+ということになります。長く「現役」で使い続けたいなら、上位モデルの方が安心です。
ハードウェアの冷却性能と筐体の作り
DS223jとDS224+を並べてみると、筐体(ケース)の設計にも違いがあることに気づきます。DS223jは白いプラスチック製でカジュアルな印象ですが、DS224+は黒いしっかりとした作りで、前面のHDDカバーが簡単に取り外せる「ホットスワップ」に対応しています。
ホットスワップとは、電源を入れたまま故障したハードディスクを交換できる機能です。DS223jの場合はネジを外してケースを開ける必要がありますが、DS224+ならレバー操作だけで交換が完了します。メンテナンスのしやすさは、長期運用において意外と重要です。
また、内部の冷却効率もDS224+の方が考慮されており、高負荷時でもパーツに負担をかけにくい設計になっています。夏場の温度上昇など、過酷な環境下での信頼性を重視するなら、ハードウェアとしての質が高いDS224+が有利です。
コストパフォーマンスを考える!導入費用と運用コスト

最終的にどちらを購入するか決める際、最も気になるのは「価格に見合う価値があるか」という点でしょう。本体価格だけでなく、一緒に購入するハードディスク(HDD)の費用や、日々の電気代まで含めたトータルコストで考える必要があります。
ここでは、具体的にどれくらいの費用差が出るのか、そしてその差額を払う価値がどこにあるのかを深掘りします。
本体価格とHDDを合わせたトータル予算のイメージ
NASを動かすには、本体とは別に2台のハードディスクが必要です。例えば、4TBのHDDを2台購入して「RAID 1(ミラーリング)」で運用する場合、HDD代だけで約3万円ほどかかります。
DS223jを選んだ場合、合計予算は約6万円前後。対してDS224+を選んだ場合は、合計予算は約8万円強となります。この「2万円強の差」を、前述した「処理速度」「スナップショット」「拡張性」に支払えるかどうかが判断の分かれ目です。
もし予算が限られているのであれば、無理にDS224+を買ってHDDの容量を削るよりも、DS223jを選んで余裕のある容量のHDDを買う方が、NASとしての満足度(保存できる量)は高くなるかもしれません。
消費電力の違いが月々の電気代に与える影響
「高性能なDS224+は電気代が高そう」というイメージがあるかもしれませんが、実は近年のCPUは非常に効率が良く、両者の電気代に大きな差はありません。メーカー公表値では、アクセス時の消費電力はむしろDS224+の方がわずかに低い場合もあります。
具体的には、どちらのモデルも24時間稼働させたとしても、月々の電気代は数百円(300円〜500円程度)の範囲内に収まります。これはLED電球1〜2個分程度のわずかな電力であり、家計を圧迫するようなレベルではありません。
したがって、運用コストの差で機種を選ぶ必要はほとんどないと言えます。むしろ、消費電力を気にするのであれば、HDDを「NAS専用」の低発熱・省電力モデル(WD RedやSeagate IronWolfなど)にすることの方が、電気代と寿命の両面で効果的です。
どちらを買えば「後悔しない」買い物になるのか
NAS選びで最も避けるべき後悔は、「安さで選んだ結果、動作が遅くて使わなくなってしまうこと」です。特に「Synology Photos」などで大量の写真を管理したい場合、DS223jの処理待ち時間に耐えられず、結局使わなくなってしまう人もいます。
逆に、自分にとってオーバースペックなDS224+を買ってしまい、ただのバックアップにしか使っていないというケースもあります。しかし、この場合は「動作が速くて快適」というメリットは享受し続けられるため、実害は「初期投資が少し高かった」ことだけです。
迷った時のアドバイスとしては、「少しでもNASで色々遊んでみたい」「家族みんなでサクサク使いたい」という気持ちが1%でもあるなら、頑張ってDS224+を選ぶことをおすすめします。その快適さは、数年後に振り返ったとき、間違いなく差額以上の価値を感じさせてくれるはずです。
まとめ:Synology DS223jとDS224+の違いを理解して最適な1台を
SynologyのDS223jとDS224+は、どちらも非常に完成度の高いNASですが、その性格は大きく異なります。最後に、それぞれのモデルがどのような人に向いているのかを簡潔にまとめます。
DS223jがおすすめな人
・初めてのNASで、まずは予算を抑えて導入したい
・スマホやPCのバックアップ、ファイル共有ができれば十分
・同時にアクセスするのは自分や家族など、少人数に限られる
・白を基調としたインテリアに馴染むデザインが好み
DS224+がおすすめな人
・管理画面の操作やアプリの起動など、サクサクとした快適さを重視する
・「スナップショット」による最強のデータ保護機能を手に入れたい
・メモリを増設して、Dockerや仮想マシンなど高度な機能を使い倒したい
・仕事のデータや大量の動画など、負荷の高い作業を想定している
DS223jは「シンプルで手軽な保存場所」を求める方に最適なエントリー機であり、DS224+は「可能性が無限に広がる万能サーバー」を求める方にふさわしい上位機です。自分のライフスタイルやデータの重要度、そして「どこまでNASを使いこなしたいか」を基準に選べば、後悔のない買い物ができます。
大切なデータをどこに預けるかは、デジタルライフの質を左右する大きな決断です。この記事が、あなたにとって最高のNAS選びの参考になれば幸いです。
