パソコンの増設やデータ保存用の外付けドライブを購入しようとした際、「3.5インチ」と「2.5インチ」という2種類のHDD(ハードディスク)を目にする機会は多いはずです。これらは単に大きさが違うだけでなく、性能や得意とする用途、そしてコストパフォーマンスにおいても明確な違いがあります。
ストレージ選びで失敗しないためには、それぞれの特徴を正しく理解し、自分の目的に合ったモデルを選ぶことが欠かせません。この記事では、HDDの3.5インチと2.5インチの違いや性能の差を、初心者の方でも分かりやすいようにやさしく解説します。
読み終える頃には、あなたがどちらのサイズを選ぶべきかがはっきりと分かるようになっているでしょう。ぜひ最後までチェックして、後悔のないストレージ選びに役立ててください。
HDDの3.5インチと2.5インチは何が違う?主な特徴と性能の差

まず最初に、HDDの2つの規格における根本的な違いについて見ていきましょう。一般的に3.5インチは据え置き型、2.5インチは持ち運び型やコンパクトPC用というイメージがありますが、内部の仕組みにも性能を左右する違いが隠されています。
3.5インチと2.5インチの主な違い
・物理的な大きさと設置スペースの違い
・データ読み書きのスピード(回転数)の傾向
・最大保存容量と1GBあたりの価格差
物理的なサイズと厚みの違い
3.5インチHDDと2.5インチHDDの最も分かりやすい違いは、その「大きさ」です。3.5インチは、およそハガキ1枚分ほどの面積があり、厚みもしっかりとしています。主にデスクトップパソコンの内部や、据え置き型の外付けHDDとして採用される規格です。
一方、2.5インチはスマートフォンの半分程度の面積で、非常にコンパクトに作られています。こちらはノートパソコンの内部ストレージや、電源ケーブルを必要としないポータブルHDDとして広く普及しています。このサイズ感の違いが、そのまま「持ち運べるかどうか」の差に繋がります。
また、2.5インチの中には「厚み」の違いも存在します。一般的な7mm厚のものから、大容量モデルでは9.5mmや15mmといった厚いものもあり、ノートパソコンの内部に入れる際は自分のPCがどの厚みに対応しているかを確認する必要があります。
接続端子と互換性のポイント
どちらのサイズのHDDも、現在の主流は「SATA(シリアルATA)」という規格の端子を採用しています。驚くべきことに、3.5インチ用と2.5インチ用のSATA端子は形状が同じであるため、物理的なスペースさえあれば3.5インチ用のパソコンに2.5インチHDDを接続することも可能です。
ただし、逆のパターンは不可能です。ノートパソコンのような2.5インチ用のスペースに、物理的に大きな3.5インチHDDを入れることはできません。デスクトップPCに2.5インチHDDを取り付ける場合は、隙間を埋めるための「マウンター」と呼ばれる変換アダプタを使用するのが一般的です。
端子が同じであっても、供給しなければならない電力(電圧)には違いがあるため、外付けケースなどを利用する際は必ずそのHDDのサイズに対応した製品を選ぶようにしましょう。
記録方式(SMRとCMR)による性能の差
近年、HDDの性能を語る上で欠かせないのが「SMR」と「CMR」という記録方式の違いです。3.5インチHDDには、高速で安定した書き込みができる「CMR方式」を採用したモデルが多く存在します。これは瓦状にデータを重ね書きしないため、頻繁なデータの書き換えに強いのが特徴です。
対して2.5インチHDDは、限られたスペースに多くのデータを詰め込むため、データを重ねて記録する「SMR方式」を採用しているモデルが主流となっています。SMR方式は、一度に大量のデータを書き込む際に速度が低下しやすいという弱点があるため、性能重視の方は注意が必要です。
特にNAS(ネットワーク上の保存庫)や動画編集などで頻繁にデータを読み書きする場合は、3.5インチのCMR方式を選んだほうがストレスなく作業を進められるでしょう。2.5インチを選ぶ際は、性能よりもコンパクトさを優先していることを意識してください。
性能面での決定的な違い!回転数と転送速度のポイント

HDDの性能を大きく左右するのが、内部のディスクが回るスピード、つまり「回転数」です。この回転数が速ければ速いほど、データの読み書きスピードも向上します。3.5インチと2.5インチでは、この回転数の基準が異なっています。
性能を重視して選びたいのであれば、単に容量だけでなく、スペック表に記載されている「rpm(回転数)」という項目に注目することが大切です。
回転数(RPM)がパフォーマンスを左右する
HDDのスペック表によく書かれている「7200rpm」や「5400rpm」という数値は、1分間にディスクが何回転するかを表しています。3.5インチHDDの多くは、高速な7200rpmを採用しており、高いパフォーマンスを発揮します。
これに対し、2.5インチHDDは省電力や静音性を重視するため、5400rpmが主流です。回転数が低いということは、ディスクからデータを探し出すスピード(シークタイム)が遅くなることを意味します。そのため、OSの起動やソフトの立ち上がり速度では、どうしても3.5インチに軍配が上がります。
もちろん2.5インチにも7200rpmの高速モデルは存在しますが、熱を持ちやすかったり動作音が大きくなったりする傾向があります。速度を追求するなら3.5インチ、静かさとコンパクトさを求めるなら2.5インチという住み分けができています。
データ転送スピードの実感差
実際のデータ転送速度(シーケンシャル速度)においても、3.5インチの方が有利な構造になっています。これは、3.5インチの方がディスクの外周部分の面積が広いため、1回転で読み取れるデータ量が多くなるからです。大容量の動画ファイルを移動させる際などは、その差を顕著に感じるでしょう。
2.5インチHDDは、ディスク径が小さいため、どうしても1秒間に転送できるデータ量に限界があります。近年のモデルでは密度を高めることで速度を補っていますが、それでも3.5インチのハイエンドモデルと比較すると、体感できるレベルでの差が生じることがあります。
もしパソコンのシステム用ドライブとして使うのであれば、3.5インチの高速モデルを選ぶか、あるいはHDDではなくSSD(ソリッドステートドライブ)を検討するのが現代のスタンダードと言えます。HDDをデータ保存用(倉庫用)として使うなら、この速度差はそれほど大きな問題にはなりません。
耐久性と熱への強さについて
HDDは精密機器であり、熱に非常に弱いという特性があります。3.5インチHDDは筐体が大きいため、内部の熱を逃がしやすく、冷却ファンなどを備えたケースでの運用も容易です。これにより、長時間の連続稼働でも安定した性能を維持しやすいというメリットがあります。
一方、2.5インチHDDは部品が密集しており、熱がこもりやすい傾向にあります。特にノートパソコンの内部などは空気の流れが悪いため、高負荷な作業を続けると温度が上昇し、故障の原因になることもあります。ただし、2.5インチはもともとモバイル用途を想定しているため、衝撃に対する耐性は3.5インチよりも少し高く設計されています。
容量とコストパフォーマンスの比較

ストレージを選ぶ際に最も気になるのが、「いくらで、どれだけの容量が手に入るか」という点ではないでしょうか。HDDは今でも、1GBあたりの単価が非常に安いデバイスとして重宝されていますが、サイズによってそのお得感には大きな開きがあります。
大容量のデータをバックアップしたいと考えているなら、間違いなく3.5インチが第一候補になります。なぜそう言えるのか、具体的な理由を見ていきましょう。
3.5インチは大容量の王道
3.5インチHDDの最大の魅力は、その圧倒的な「最大容量」にあります。技術の進歩により、現在では1台で20TB(テラバイト)を超えるような超大容量モデルも市販されています。これは、2.5インチHDDでは物理的に実現が難しい領域です。
写真や動画を何万枚も保存したり、テレビ番組を大量に録画したりする用途では、3.5インチHDD以外に選択肢はないと言っても過言ではありません。2.5インチで同じだけの容量を確保しようとすると、複数台のドライブを管理する必要があり、手間もコストもかかってしまいます。
物理的なスペースに余裕があるのなら、将来的なデータの増加を見越して、3.5インチの大容量モデルを1台導入しておくのが最も効率的です。複数のHDDを1つにまとめられることは、管理のしやすさという面でも大きなメリットとなります。
1GBあたりの単価の安さ
コストパフォーマンス、つまり「容量単価」の面でも3.5インチが圧倒的に有利です。一般的に、同じ容量の3.5インチと2.5インチを比較すると、3.5インチの方が安く販売されています。これは生産数が多いことや、部品を極限まで小型化する必要がないため、製造コストを抑えやすいためです。
特に4TBや8TBといった売れ筋の容量帯では、3.5インチのコストパフォーマンスの高さが際立ちます。予算を抑えつつ、とにかくたくさんのデータを保存したいユーザーにとって、3.5インチは非常に心強い味方となってくれます。
逆に2.5インチは、小型化のための技術コストがかかっているため、容量あたりの価格はどうしても高くなりがちです。持ち運びの必要がないのに2.5インチを選ぶのは、コスト面で見ると少し損をしてしまう可能性があるため注意が必要です。
2.5インチの容量限界と進化
2.5インチHDDも進化を続けていますが、物理的なサイズ制約から、最大容量は今のところ5TB程度で頭打ちになっています。これ以上の容量を2.5インチの薄さで実現するのは技術的に非常に難しく、現在はSSDへの移行が急速に進んでいます。
しかし、2.5インチHDDには「厚み」を増やすことで容量を稼ぐモデルもあります。例えば、ポータブルHDDとして販売されている製品の中には、4TBや5TBを実現するために通常よりも厚いHDDを採用しているものがあります。これらはノートPCの内部には入りませんが、外付け用としては非常に重宝されます。
もし2.5インチで大容量を求めるなら、内蔵用としてではなく、完成品のポータブルHDDとして購入するのが一般的です。用途に合わせて、この容量の限界を理解した上で選択することが重要になります。
| 比較項目 | 3.5インチHDD | 2.5インチHDD |
|---|---|---|
| 最大容量 | 非常に多い(20TB超) | 限定的(最大5TB程度) |
| 容量単価 | 非常に安い | やや高い |
| 主な回転数 | 7200rpm / 5400rpm | 5400rpm |
| 持ち運び | 不向き(重くて大きい) | 最適(軽くて小さい) |
設置場所や利用シーンに合わせた選び方

HDDの性能や容量の違いが分かったところで、次は「具体的にどんなシーンでどちらを選ぶべきか」という実践的な選び方について解説します。自分のライフスタイルやパソコンの使い方を思い浮かべながら読んでみてください。
間違ったサイズを選んでしまうと、設置できなかったり、電源周りで苦労したりすることになります。適切な選択をするためのヒントをまとめました。
デスクトップPCとノートPCの使い分け
まず、内蔵用として購入する場合のルールはシンプルです。一般的なデスクトップパソコンであれば、拡張性が高いため3.5インチを選びましょう。ケース内部に3.5インチ用のベイ(取り付け場所)が用意されており、安価に大容量を増設できます。
一方で、ノートパソコンや省スペース型の小型PC(ミニPC)の場合は、物理的に2.5インチしか入りません。最近のノートPCはHDDではなくSSDが主流ですが、古い機種の修理や一部のHDD搭載モデルの増設には、2.5インチHDDが必須となります。
もしデスクトップPCを持っていて、特に理由がないのであれば、性能面で優れる3.5インチを選ぶのが正解です。2.5インチはあくまで「スペースが限られている場合」の選択肢だと考えておけば間違いありません。
外付けハードディスクとしての活用
外付けHDDとして使う場合は、自分の用途が「据え置き」か「持ち運び」かで判断が分かれます。テレビ番組の録画用や、自宅のPCのバックアップ用として出し入れしないのであれば、3.5インチを採用した外付けHDDがおすすめです。
3.5インチの外付けHDDは、大容量で安価ですが、動かすにはコンセントからの電源供給(ACアダプタ)が必要です。デスクの上がケーブルで少し煩雑になりますが、その分安定して動作し、大容量のデータを安全に保管できます。
逆に、仕事のデータを持ち歩いたり、ノートPCと一緒にカフェで作業したりするなら、2.5インチの「ポータブルHDD」一択です。USBケーブル1本でパソコンから給電できるため、コンセントを探す必要がなく、カバンに入れても邪魔になりません。
据え置きなら「3.5インチ+ACアダプタ給電」、持ち運びなら「2.5インチ+USBバスパワー給電」と覚えておきましょう。
NAS(ネットワークHDD)に向いているのは?
複数のデバイスでデータを共有するNAS(ネットワークHDD)を構築する場合、基本的には3.5インチHDDが推奨されます。NASは24時間365日稼働し続けることが多いため、耐久性が高く、熱を逃がしやすい3.5インチの方が適しているからです。
また、NAS向けのHDD(WD RedやIronWolfなど)の多くは、3.5インチをメインにラインナップされています。これらの専用モデルは、複数のHDDが同時に回転することによる振動への対策が施されており、大切なデータを守るための信頼性が非常に高く設計されています。
2.5インチのNASも存在しますが、基本的には静音性や極限の省スペースを求める特殊な用途向けです。一般家庭やオフィスでNASを導入する際は、信頼性とコストのバランスが良い3.5インチのNAS用HDDを選ぶのが最も賢明な判断と言えます。
電力消費と静音性の違い

最後に、意外と見落とされがちな「電力消費」と「音」の違いについて触れておきます。これらは長期間使い続ける中で、日々の快適さや電気代に関わってくる重要なポイントです。
特に静かな部屋で作業をする人や、少しでも電気代を節約したいと考えている人にとっては、2.5インチHDDの特性が魅力的に映るかもしれません。
動作音の静かさの比較
HDDは内部で物理的にディスクを回転させているため、どうしても「駆動音」が発生します。この音に関しては、サイズが小さく回転数も低い傾向にある2.5インチHDDの方が圧倒的に静かです。耳を近づけないと聞こえないほど静かなモデルも多くあります。
これに対し、3.5インチHDDはディスク自体が重く、それを高速で回転させるため、「ウィーン」という回転音や、データを探す際の「カリカリ」という音が響きやすい傾向にあります。特に静音重視のPCケースを使っていない場合、夜間の静かな環境では気になることがあるかもしれません。
もし寝室に置くPCや、リビングで使う静かなサーバーを作りたいのであれば、あえて2.5インチHDDを選ぶという選択肢もアリです。ただし、音の感じ方は個人差があるため、高性能な3.5インチモデルの中にも静音性に配慮された製品があることを覚えておきましょう。
消費電力と給電方法(ACアダプタの有無)
消費電力については、2.5インチの方が圧倒的に低電力で動作します。前述の通り、2.5インチはUSBポートからのわずかな電力(バスパワー)だけで動くように設計されています。これは、ノートパソコンのバッテリー寿命を延ばすためにも非常に重要なポイントです。
一方、3.5インチHDDは大きなディスクを回し、制御基板を動かすために多くの電力を必要とします。そのため、USBからの電力だけでは足りず、外部のコンセントから直接電源を取る必要があります。これが、3.5インチの外付けHDDに必ず大きなACアダプタが付属している理由です。
年間の電気代で見ればそれほど大きな差にはなりませんが、常に電源を入れておくNASなどの場合は、わずかな消費電力の差が積み重なっていきます。省エネ性能を第一に考えるなら、2.5インチにメリットがあると言えるでしょう。
省エネ性能のトレンドと今後の展望
最近のHDDは、3.5インチモデルであっても、使っていない時は自動で回転を止める「スリープ機能」などの省エネ技術が進化しています。また、ヘリウムガスを内部に封入することで、ディスクの空気抵抗を減らし、消費電力と発熱を抑える高度な技術も大容量モデルで採用されています。
しかし、それでも「物理的な軽さ」という根本的なアドバンテージがある2.5インチに、省エネ性能で勝つのは難しいのが現状です。環境負荷を少しでも減らしたい、あるいは熱による故障リスクを極限まで下げたいという場合は、低回転・低電力なモデルを選ぶのが一つの手です。
HDDの3.5インチ・2.5インチの違いを知って性能を最大限に引き出そう
ここまで、HDDの3.5インチと2.5インチの違いについて、性能、容量、コスト、用途など様々な角度から解説してきました。最後に、それぞれのサイズがどんな人に向いているのかをまとめます。
3.5インチHDDがおすすめな人は、デスクトップPCを利用しており、とにかく安く大容量のストレージを確保したい人です。動画や写真の大量保存、テレビ録画、NASでの運用など、安定した環境でたくさんのデータを管理したい場合には、3.5インチが最高のコストパフォーマンスを発揮します。
2.5インチHDDがおすすめな人は、ノートPCを使っている人や、データを持ち運びたい人です。コンパクトで電源アダプタが不要なポータブル性能は、2.5インチならではの強みです。また、動作音が静かなので、静音性を重視するサブ機などの用途にも適しています。
HDDは、今でも大容量データを保存するための「データの倉庫」として非常に優秀なデバイスです。今回ご紹介したそれぞれの特性を理解した上で選べば、あなたのデジタルライフはもっと便利で快適なものになるでしょう。使用環境や予算に合わせて、自分にぴったりの1台を見つけてください。



